村井純氏が金子勇氏死去に寄せたコメントが感動的だった


有名なプログラマーの金子勇氏が急逝されたそうである。担当弁護士の方のBlog記事はこちら。
訃報:将星隕つ: 壇弁護士の事務室

「担当弁護士」というからには何らかのトラブルがあった方ではないかと思われるかもしれないが、まあそのとおりで、世間を騒がした挙句社会問題にまで発展したファイル共有ソフト「Winny」の作者の方であり、起訴されて長いこと裁判を闘った挙句、無罪を勝ち取った方である。

まあ興味のある方は各自ぐぐってみていただければと思うし、ワタシもそんなに詳しくは知らない。

当時僕は典型的な地方の下請け SIer で「えんじにあ」を派遣する側の中間管理職だったわけだが、それはもう大手 IT ベンダーさんからこのテのファイル共有ソフトについてしつこく社員教育しろだのなんだの、おたくの社員が BitTorrent 使いやがってけしからんだの (註:当時 Linux ディストリビューションの多くは1次配布手段として BitTorrent を使っているものが少なくなかった) と、さんざんぱら言われたものである。

作者である金子氏が逮捕されて行動に自由がなくなり、さらに Winny の継続開発を禁止されたことによって、いやまあ脆弱性をついたファイル漏洩事故というかマルウェア (平たく言うとウィルス) によるものなので事故というより意図的な事件なのだけれども、それこそ企業の超機密から自衛隊の防衛上の機密までエラくいろんな情報がぼろぼろ出てしまうという騒動があった。海外でのウィキリークス騒動より日本の Winny 事件の方がちょっと早かったように記憶している。

まあそんなわけで、金子氏は極悪非道の凶悪犯となりかかったわけだが、まあ無罪を勝ち取ったのだそうである。

彼は純粋に技術を使い、独特のマネージメント力でユーザーの声を反映して、当時最先端の技術を一般に広く提供したのであり、それが違法に利用される可能性は認識していたのかもしれないが、そのために提供したものではないわけで。

さらにいえば情報漏えい事件については、彼が自由に Winny を修正できていればあそこまで大騒ぎにならなかったのではないかとも考えられる。

まあここまではいろいろと世間的なところから聞こえてくる同氏にまつわる情報を、僕が勝手にかつわりと好意的に解釈したものだ。もしかしたら間違っているかもしれない。ただ、今回のこの記事のテーマはそこではない。

ひとつ言うと、身柄拘束されて自由な行動と時間が著しく制限されていた同氏が、こんなに早く亡くなってしまったというのはとても残念だろうなとは思う。むしろヒトより長生きすべき権利はあるのじゃないかなあという気はする。

で、本題。
慶応藤沢キャンパスの村井純氏がこの件についてコメントを発表された。
ちょっと著作権とか問題あるかもしれないけども、全文引用しちゃおう。引用元はこちら→「金子勇さんの遺志が健全に羽ばたける世に」、慶応大環境情報学部長 村井純氏が追悼の言葉:ITpro

金子勇さんはソフトウェア開発者として極めて貴重なパイオニアでありヒーローでもありました。

途中困難がありましたが、その困難は多くの新たな支持者と友人をもたらし、新たな夢の実現に向けて活動していたと聞いていて、期待を持ってその成果を待っていました。

そのような環境を構築された平木先生、稲葉先生、壇先生、など関係者の方々に心より敬意を表します。

さて、私たちとしては金子勇さんの残された技術と背景となっていた精神と勇気を理解し、発展させ伝えていくことが使命です。

また、金子勇さんが受け止めた困難の社会的要因を追求し、金子勇さんのスピリットが健全に羽ばたける世に治すことは、金子勇さんとのお別れに際し私たちの硬い約束とさせていただきたいと思います。

金子勇さんの光は私たちの心にいつまでも宿ります。

心より御冥福を御祈り致します。

村井純
WIDEプロジェクトファウンダー
慶応義塾大学環境情報学部長・教授

村井純氏といえば、日本でインターネットを作った人である。 真意はもちろん知らないが、そういうひとが、このように、無批判に、全面的に金子氏に賛美と追悼の言葉を贈るというのは、とても意義深いことだと思う。

つまり、我々技術を使うものは、臆することなく、自分達が望むものを作り、提供していくということでいいのだということを村井氏が改めて宣言しているようにすら僕には思えた。

もちろん、意図的に悪事をはたらくのは良いことではない。しかし、なにかを恐れて新しいことに踏み出さないのもやはり罪なのかもしれない。

僕個人の金子氏に対する感情は、上記のような経験があるので「ちっ、面倒なことしてくれたヒトだな」というのが正直なところなのだけれども、村井氏のこのコメントはとても感動したのであった。


,

コメントを残す